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「そがくんと あおざめた あかい りゅう」
こばやし どうむ

そがくんは しょうがっこう3ねんせいの げんきな おとこのこです。
しかしそがくんは、あしのながいひとたちに、じかんをとめられてしまいました。

そがくんのともだちが、そがくんをなんとかしようと、いろいろなてをつくしました。
でも、じかんをもとどおりにするやりかたをしっているひとが、だれもいないのです。
みんなはとほうにくれました。「そがくん、うごいてよ」「またみんなであそぼうよ」

みんなは「じかんのもり」に行くことにしました。あらゆるじかんをみまもる
ものが、もりのおくふかくにすんでいるといううわさを、むらのものしりじいさんにききました。

しかし、「じかんのもり」はあたらしくいえやマンションをたてるために、きりひらかれていました。
「ひどい!」あるこどもがヘルメットのおじさんにいいました。
「クライアントのニーズにこたえるんだよ、ぼうず」
「いみわかんないんだけど、おじさんうんこだよ」「そうだそうだ」
こどもたちはぷんぷんです。うんこをおっぱじめるこもいました。
「かわいげがないこぞうだなあ…かえりな、そのうんこもひろっていけ!」

「どうしよう、このままでひきさがれないよ」
「あれをだそう。」「あれって?」
 
けんじくんがいいました。
「じつはうちのいなばものおきには、りゅうがすんでいるんだ」
「りゅう?」「それってつよいの?」「おっきいの?」
「ほんきだすとすごいらしいよ」
みんなはどよめきました。

いなばものおきのまえににみんなは着きました。なにかがブツブツいっているのがきこえます。
「どいつもこいつも…だからなんだっていうんだ…くそったれめ…」
「あのこえ、りゅうくんかなぁ…りゅうくん、きみにたのみたいことがあるんだ。
きみにしか、できないことで、ぼくたちすごくこまっているんだ。」
「こまったらすぐわたしのせいだ…だれのせいでもないのに…
ここまでこなければよかった…なにもしなければよかった…」
しずかなうなりこえがきこえてきました。
「りゅうさん、そがくんをたすけてよ、」「ぼくたちではてにおえないんだ」
「…」りゅうはかんがえこんでいます。
「…そとにでたくないんだ…」「なんで?」「そとのせかいはみんながわたしを
いいようにつかって、それっきりさ。」
りゅうのこえがおおきくなりました。
「わたしがいたことでやくにたったことなどなにひとつないんだ…
どんなによくしてもわるくなるだけだし、みんなきえてしまえばいい…」
エリカがいいました。
「そんなことないよ!」
「ねえりゅうさん、ぼくたちとともだちになろうよ。」
「ともだちになってくれるのはうれしいよ。だけど、みんなのこと、
たべちゃうかもしれない…」
「おなかがすいたら、うちのママがつくったカレーをたべればいいよ!」
「お誕生日にも呼んであげる」「そ、それは嬉しいなあ」
しかしりゅうは、ふたたびくらいきもちになって、こういいました。
「でも…そがくんがあんなことになったのはわたしのせいなんだ」
「えっ、どういうこと?」
みんながざわざわしています。
「わたしがぶっとばしてしまったんだ。そのことについて、わたしは…」
みんなでいいました。
「もうやってしまったことでも、あやまらないときもちがすっきりしないよ。
「そがくんに、あやまりにいってあげてよ。」
「いこうよ」「…だいじょうぶかな?」
「だいじょうぶさ!あ、でもあごのしたのうろこにはきをつけてね。」
「…」
ゆっくりと、いなばものおきから、かおのあおざめた、あかいいろのりゅうが出てきました。
ものおきにはうんこがありました。
「うわあ、でかい!」「なかったことにしよう!」

あおざめたあかいりゅうは、ゆうゆうとそらをとび、あっというまに
こうじげんばにたどりつきました。
きをきるおと。じめんをほりかえすおと。だいちのすすりなくこえ。
「いたいよう。おたすけえ。なにもわるいことしてないよう。」
りゅうにはみえました。たくさんたくさんのいきものがひからびて、しんでゆくことが。
こうじげんばのえらいひとに、ちかづいてりゅうはぎろり、とにらみました。
「まってくれ!うちにも、にょうぼうやこどもがいるんだ!」
「これでくらしてるんだ、かんべんしてくれ!」
「まわりをかえりみず、いきてゆくことが、どれほどむごたらしいことか…
はじめから、きちんとやりなおしてください…」
りゅうがいきをふくと、げんばかんとくはあかちゃんになりました。
うんこをもらしています。
「おたすけー!」
ほかのさぎょういんたちは、くものこをちらすようににげていきました。
そして、まだきをきられていない、じかんをみまもるもののいえに行きました。
「もしもし、すみません」 「はい、どなたかな」
「じつはこのちかくで、じかんをとめられているおとこのこがいるとおもうのですが…」
「ああ、あのこね。しんぱいすることはないよ、あなたたちがいればじきにもどるさ」
「よかった…」みんなはむねをなでおろしました。
りゅうはいいました。
「でも、そがくんは、ちがうせかいのにんげんなんだ。だから、みんなとあそべる
じかんがかぎられているよ、そして、わたしもそうなんだ」 りゅうがつぶやきました。
「えっ、そんなの、ずるいよ、」「もっともっとあそびたいよ!」
みんながっかりしています。
「でも、もどらなくちゃいけないんだ」「なんで?ここにいようよ。」
りゅうはいいました。
「むこうのせかいにも、おなじくらいたいせつなひとたちが…」
すると、ゆっくりとそがくんがめをさましました。「あ、あれ…みんなげんきだった?」

わあっ、と、こえがあがりました。「よかったね、よかったね!そがくん!」「みんなでドロケーやろうよ」
「いろおにもやろうよ」 そがくんはそのひ、くたくたになるまでになって
あそび、とてもたのしいきもちになりました。「じゃあ、またあしたね!」「う、うん…でも…」
りゅうがいいました。「ごめんね、ごめんね、ごめんね…」
そがくんのまわりにはやけに「あり」があつまるのでした。「おかしいな、あめだまなんてもってないし…」

そのばん、りゅうが「みんなをしんぱいさせないためにもあのせかいへもどりましょう。
そもそもはわたしのせいでそがくんはこんなことに…」
「いいんだ、すごくたのしいいちにちになったよ」「そういっていただければ…」

すると、
そがくんのへやで、とつぜんなにかがやぶれるおとがしました。なにやらくろいひとがでてきます。
おんなのひとです。あたまにはなにかがはえています。「こっちよ」すいこまれるように、
そがくんとりゅうはすいこまれていきました。

そのばん、よぞらには、りゅうがそらたかくのぼっていくのがみんなにはみえました。
そして、もうみんなはそがくんにあうことはありませんでした。でも、いつのひか
そがくんにきっと、かならずあえるとしんじていました。


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